第19話 「ルイ王朝時代から続く石鹸を作っています」の巻


★ もくじ ★━━━━━━━━━━━★

1.マルセイユ石けんを名乗る資格
2.ミツバチを襲うサルさん、クマさん

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 ものすごい台風でした。被災された地域の方々が少しでもはやく日常をとりもどせるよう、お祈り申し上げます。
 配送も少し遅れているようでして、ご迷惑をおかけしております。

 台風が過ぎたら、あっという間に晩秋のような気候になりました。昨夜はストーブを出してきたくらいです。

1.マルセイユ石けんを名乗る資格


 夏の間はなかなかできなかった石けんづくりがはかどっています。
 はかどっているというより、追われています。

 ささやまビーファームで作る石けんの多くは、「マルセイユ石けん」という製法で作っています。マルセイユ石けんの作り方は、中世ヨーロッパで確立しました。
 名前から連想される通りフランス発祥の石けんで、ルイ王朝が「こうやって作りなさい」と決めた製法です。その製法を守っているのが「マルセイユ石けん」と名乗れる石けんです。

 ルイ14世の以前に、石けんの作り手さんがたくさん生まれて、みんながみんな「私の石けんがマルセイユ石けんよ」と言い始めたのだそうです。
 それでルイ14世が「いやいやいや、なんか基準決めようよ」となって、決まった基準が「6月7月8月は製造しない」とか、「オリーブオイルは72%以上使うこと」などです。

 これにならい、ささやまビーファームでも夏の間は石けんを作りません。夏に石けんを作ると、石けんの鹸化の速度が速くなりすぎてしまい、密度が低い石けんになってしまいます。
 つまり質が悪い、ということですね。
 たしかに、暑い時に作る石けんは、すぐに固まるのだけどあまりにも柔らかすぎて使い物にならないことが、経験上あります(実際試してみました)。ですから、私は夏には石けんは作りません。

 また、オリーブオイルの配合量も72%にするのがちょうどよくて、とてもいい石けんが出来上がりますので、ビーファームの多くの石けんはオリーブオイルの配合量を72%にしています。もちろん100%のもありますし、ほかの高級なオイルがたっぷり入っている石けんもあります。

 ですから、いまの季節、在庫が非常に少なくなってきているので、目を逆三角形にしながらもがんばって作っています。今日作ったラベンダー石けんも、非常にええ出来でとても満足しています。
 枠から出す瞬間に、「あー、これはええ石けんだ!」とわかります。


2.ミツバチを襲うサルさん、クマさん



 ミツバチの大敵には、ダニやスズメバチがいますが、もう一つ大きな大敵に、動物がいます(あと農薬がありますが)。
 丹波篠山は結構自然豊かなこともあって、様々な動物がいます。

 その中でも、一度ずつやられたことがあるのがサルとクマです。

 ある日、養蜂場として置いている地域のおじさんが、朝早く私たち夫婦の家に来ました。
「松村さん!あんたとこの養蜂場が大変なことになっとんで!」

 慌てて駆け付けると、川沿いに置いてあった養蜂箱が数個、川の中に落とされていました。その中から、巣枠がいくつか持ち出され、山のほうに向かって、点々と投げ捨てられていたのです。
 その数日前から、山にサル影が見えていたので、間違いなくやつらでしょう。

 想像するに、サルさんがやってきてハチミツを食べたくて巣箱をあけ、巣枠(ミツバチのいる枠です)を取り出して、山の中にもっていこうとしたものの、途中でたくさんのミツバチに刺されてあえなく退散したのではないか。
 予想通り、そのあとサルの襲撃は一切なくなったのですが、これはこれで大変な損害でした。


 またある日は、クマに襲われたこともあります。

 これはまた違う養蜂場なのですが、近くのおじさん(サルの時と違うおじさん)から電話がかかってきました。同様に
「あんたとこの養蜂場が大変なことになっとるで!」と。

 行ってみると、もうクマはいなくなっていたのですが、あきらかに「クマさんが座っていたであろう、草むらのへこみ方」と、クマさんが食べたであろう巣枠が、座っていた場所の右と左にいくつか置いてあって、

「ああ、ここに座って食べたんやな」

 というのがハッキリとわかりました。

 クマは危険ですし、二度三度と食べにくる可能性があるので、即座にその養蜂場からは巣箱を移動し、その年はその養蜂場に蜜蜂を置くことはやめました。


 まさに自然との闘いなのですけども、野生の動物に関しては「仕方ない」と思うようにしています。ここでやられたのは「いい経験」なのだ、と。ミツバチさんはかわいそうだけど、これも計算に入れておかないといけません。

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